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■ 南 賢一氏(横浜市在住、60歳台) 全文
 
 83篇全てのエッセーに著者の心の温かみと美しさを感じました。いつまでも大切にしたい本であり、多くの中高年の人たちにぜひ読んでいただきたい本だと思いました。最近のエッセーのなかには、何事も強く表現され、ともすれば押しつけるような大げさな文章も多く、途中で閉口することがあります。この「ちいさな喜びと日々」は、それらとは対極にあり、米寿を超えた著者の歩んで来られた人生行路には、時代背景から察しても、悲しみや苦しみ、辛い出来事など、大変厳しいものがあったでありましょうのに、すべてを心の揺らぎもこまやかに、淡々と優しく語りかけるようにつづられています。

 私は学生の頃から現在に至るまで、小津安二郎の映画を何十回となく見、ある時はほほ笑み、またある時は涙がにじむのを覚えながら、ほのぼのとした温かい情愛につつまれた作品に心のやすらぎを得てきましたが、それと同じ思いなのにふと気がつきました。

 山旅をしていた私には「ウォーキング」が面白く、まるで私のことかと思うほど「一枚のレコード」を読みながら照れました。

 二人の女児をともに生後まもなくに失っていますので、「鳩」「人形のモモ」「母の日」を涙ぐみながら読みました。

 「手を叩く」「わくらば」「手の皺」も、あと数年もすれば実感することでしょう。


 長嶋茂雄の引退、貴乃花の引退でぽっかり空いた心に、サッカーは熱いものを与えてくれました。「サッカー」をそんな気持ちで読みました。

 「雨の日」「侘助」「露草」「桜餅」「寄り道」など何とも言えない味のある文章でした。