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■『福音宣教』2005年11月号 黒川京子氏評 

 とにかく面白い。全三巻の大冒険物語ですが一気に読んでしまいました。この本を読んで、『聖書』がとても身近に感じられるようになり、『聖書』をまた読んでみたいと思いました。


 ファリサイ派、律法学者、サドカイ派などのことばが、今まではイエスの生き方とは違う人びとと簡単に私の中で分類されていましたが、実はもっと身近な人びとであり、当時のユダヤ世界には、いろいろ主張の違う人びとが一生懸命に生きていたと考えられるようになりました。


 ローマ市民であること、当時のローマ、エルサレムや聖書に登場する都市の様子が理解され、またギリシャの人びとの神々に対する考え方、ユダヤ民族が周りの人びとにどう思われているかなど、興味深く読みました。


 パウロと女性の関わりや、パウロの親、兄弟、親戚、子どもとの関わり、成長していく様子、人として人を理解することの難しさ、本人の性格の問題など、普通の人間としての悩み、苦悩、喜びがストレートに伝わってきました。


 しかし、自分の神への思いの強さから、イエスをメシヤと認めず、間違った教えが広まらないように全力を尽くしていたパウロに、もしイエスが現われなかったら、どうなっていたのだろうかと思いました。平凡な生活をおくっている普通の人びとにはこのような特別な啓示はないので、啓示を受けたと言う人びと(宗教)の中から、本物だと思うものを選び取らなくてはいけないわけです。パウロの話を直接聞いた人びとは、この人は真実を話していると感じたと記してありました。それぞれの人が選び取った結果として、今の世界、いろいろな宗教があるのですから。


 また本書から、当時の社会においても、人びとがお互いの宗教を尊重し合いながら暮らしていた様子もうかがえました。パウロが生きた時代を旅したような余韻の残る、楽しい作品です。

 
(東京教区松原教会信徒)



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