三陸書房
今月号リレー・エッセイ2
 
(7) 内包と外延  その20

食品添加物は危ないか? 
佐川 峻 
人の生存にとって、水と空気、そして食べ物は最も必要性の高いものです。いずれも日ごろ、絶えず摂取しているので、それらの品質が健康に直結していることは本能的にわかります。
そのために、食品添加物と聞くと、思わずイヤな感じがします。本来は必要でないものが日々の食品に含まれているということには警戒の感情がわき起こります。
改めて、日常的に購入している食品の表示を見ると、まあ沢山の添加物があり、それらをほぼ毎日摂取しているということに改めて驚きます。「オイオイ大丈夫かよ」といった感じです。
しかし、よく考えてみると、そもそも食品添加物とは何か、どの程度危険なのかについてはほとんど何も知らないということにも気が付きます。
具体的には、食品の包装紙に印刷されていて、例えば、「pH調整剤」、「グリシン」、「増粘剤」、「合成着色料」など容易に見つけることが出来ます。しかし、果たしてそれらがどのようなものか詳しく知っている人はあまりいないのではないでしょうか。そう言っている私も、ほとんど知りませんでした。
食品添加物は「食品衛生法」で規制されている物質で、指定添加物を指します。この法律で添加物の成分規格、保存基準、製造基準、使用基準などが定められています。
平成30年7月3日現在、規制されている添加物は455品目もあります。ネットで「指定添加物リスト」は容易に見つけられます。
「品目」というゆるやかな項目でまとめられていますので、化学物質名で勘定すると、一桁ぐらい多くなるかもしれません。
食品添加物は厚生労働省が「安全」だという物と量の両面で決められています。
よくある誤解なのですが、「食品添加物は化学物質だから怖い」と言われます。しかし食品添加物には、合成された人工的な化学物質だけでなく、合成もできますが、自然にも存在する物質もたくさん含まれています。
代表的な例としては、酸化防止や強化剤として用いられるL-アスコルビン酸、すなわちビタミンCや酸味料として用いられる乳酸などがあります。
食品添加物は使用できる食品、〇〇1kgあたり〇〇gと定められます。
例えば、いくら、すじこ、たらこを鮮やかな赤色にするための発色剤としてや細菌繁殖を防止するために使用される亜硝酸ナトリウムは、製品1kgあたり最大0.005gすなわち5mg(ミリグラム)と定められています。白い粉末のような物質です。ソーセージなどにも用いられています。
この亜硝酸ナトリウムは食塩、塩化ナトリウムの仲間で塩漬け剤です。しかし、毒物ほどではありませんが、劇物に指定されていて、致死量は2グラムです。
致死量が数グラムのものが含まれている食品を摂取して大丈夫かと心配になります。ぱらぱらと振りかけて食べる食塩でも、数百グラム摂取すると死に至るとされています。
1キロものいくらやたらこは、一回の食事では食べられないでしょう。仮に食べても含まれている亜硝酸ナトリウムは最大0.005gですから、問題は恐らくないでしょう。食べ過ぎでおなかをこわすか、塩分の摂りすぎの方が心配です。
要は、○○は危ない、だから食べたらいけないということではなく、どれだけ摂取したら危ないのという問題です。感情と理性のせめぎあいなので、問題の根が深いのです。
ここでADI(1日最大摂取許容量:Acceptable Daily Intake)というキーワードが登場します。簡単に言えば、人が生涯、その物質を毎日摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される量です。
影響はその人の体重に反比例するので、単位はmg/kg・1日で表されます。体重1kgあたり1日に摂取が許容される量です。
ここでの悪影響とはすぐに症状が出る急性の毒性や徐々に出る慢性の毒性、がんの発症や遺伝的な影響などすべてを含みます。
先ほどの亜硝酸ナトリウムのADIは0.05mg/kg・1日です。私の体重は60kgですから0.05mgに60をかけて1日あたり3mgとなります。つまり、私は毎日3mgの亜硝酸ナトリウムを摂取しても悪影響は出ませんということです。
これは、いくらやたらこの場合、製品1kgあたり最大5mgの亜硝酸ナトリウムが含まれていることがあるのですから、それらの食品を毎日約600g(!)を延々と何年も食べ続けることに相当します。
これだけ毎日食べても私にとって亜硝酸ナトリウムに関しては大丈夫だろうという数値がADIなのです。
食品添加物はこのADIという数値に基づいて規制、制限されているのですが、ではADIはどのようにして決めたのかということが問題になります。
人体で実験するわけにはゆきませんから、動物実験で決められます。
動物実験として用いるマウスやうさぎに該当物質を毎日、摂取させ、悪影響が出ない量をマウスやうさぎの体重kgあたりで推定します。次に、その量の100分の1をひとのADIとするのです。
この100分の1がミソです。動物実験では安全だとされても、ひとでは違うかもしれません。また同じ人間でも個人によって影響の差はあるでしょう。
だから、動物と人間での差を考慮して、数値を10分の1にして、さらに個人差を考慮してさらに10分の1とするのです。動物実験の結果の安全性を人間では100倍にしようとするわけです。
このADIの設定の仕方から食品添加物は言葉のイメージよりは実質、かなり安全なのだなという印象を私は受けます。
あとは、個人の判断ではないでしょうか。
ここからは私、個人の主観的な方針ですが、赤ちゃんや幼児にはなるべく食品添加物がない食事を与えたいと思います。
大人では食品添加物がある食品でも、価格や保存期間など考慮すると、実用上やむをえないのかなと思います。というか、あまり心配しません。
添加物の種類や量に神経質になるより、「見た目」をよくして「おいしく」感じるように添加物が加えられていることが結構、多いので、結果として塩分の摂りすぎとかカロリーの摂りすぎの方の影響が大きいのではと思います。
そちらの方が私的には心配です。



◇   ◆   ◇



今月はマメガキです(写真A) 。木自体はかなり大きいのですが、実は普通の柿に比べて随分小さなものです。


マメガキの木

写真A マメガキの木
(東京都杉並区上井草1丁目「柿木公園」2018年11月14日)


マメガキの大きさは右端にある10円玉よりやや大きいくらいで、直径約1.5センチです(写真B)。


マメガキと10円玉の大きさ比較

写真B マメガキと10円玉の大きさ比較
(2018年11月21日)


このマメガキは杉並区の上井草1丁目の「柿木公園」にあるものです。この辺の地域は昔、柿木(かきのき)と呼ばれていていました。柿木はマメガキのことです。
この柿木公園の少し南には杉並区立の「柿木図書館(かきのきとしょかん)」があり、私は随分、お世話になっています。
マメガキの中身はカキと似てはいますが、種が相対的に大きく、果肉部分はあまりありません(写真C)。写真のものは完全には熟れていないので種はまだ柔らかいです。


マメガキの中身

写真C マメガキの中身
 (2018年11月21日)


写真Cのマメガキを少しかじってみましたが、果肉は柔らかく熟しており甘いものの、その渋みは相当なものでした。口の中にその味が半日くらい残っていました。渋抜きをしないと到底食べられません。 
マメガキの渋は昔、和紙の防腐剤、防水剤として用いられたそうです。染められた淡い茶色はまさに「渋い」のですが、上品な華やかさもあります。





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