三陸書房
今月号リレー・エッセイ2
 
(7) 内包と外延  その25

「種子法」廃止は何を目指すのか
佐川 峻 
種子法が昨年の2018年4月に廃止されて約1年が経ちます。種子法とは、「主要農作物種子法」の略で、戦後の1952年に制定された法律です。
この種子法は、主要農作物であるコメや大豆、麦などの優良種子の安定的生産及び普及と促進は国の役割として制定されたものです。目的は、まだ食料の安定供給が困難だった戦後の状況下において、食糧の増産と安定供給を目的としたものでした。
具体的には国と都道府県が地域に適した優秀なコメ、大豆、麦の種子を開発し、農協などを通じて農家に有料で供給するというものです。国が予算を投入し、都道府県の農業試験場が研究・開発をして、種苗センターで原種を生産、農協を通じて販売されています。
種子法の目的は、コメ、大豆、麦は国の財産であり、国が管理するということでもあります。この3作物に関しては、内外の企業が独自に開発した種子を農家に販売して栽培してもらい、市場に出すということはできないようになっています。
その法的根拠の一つが種子法だったわけです。
その法律が廃止されるというので「これは外国企業を含めて、企業が農業の中枢に参入してくる」、「農業がビジネスになり、日本の弱小農家は消える」、「多国籍企業に日本の食が支配される」などの声が上がっています。
実は、この種子法の廃止の1年前、2017年に「農業競争力強化支援法」という法律が制定、施行されています。
少し長いですが、関係する部分を引用します。「第二章 国が講ずべき施策として、四 種子その他の種苗について、民間事業者が行う技術開発及び新品種の育成その他の種苗の生産及び供給を促進するとともに、独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること。」と規定されています。
今回のテーマの前、5回は「食」がこのオリーヴのテーマでした。そこで繰り返し強調したことは、日本の農業は海外の強力な技術力や世界的な規模を有する企業、農業企業に圧倒されつつあり、危機に瀕しているということでした。
このような状況のもと、先にあげた「農業競争力強化支援法」の第二章の4と種子法廃止をセットにして考えると国の目指している方向が見えてきます。
国の考えはこうでしょう。「日本の農業を維持するためには遺伝子組換えやゲノム編集を含め、種子の技術面での国際競争力を高めなくてはならない」、しかし、「旧種子法のもと、農業試験場や種苗センター、農協のルートだけでは技術力が足りない」、従って「民間が保有している高度な技術力をもっと活用するルートを作りたい」、です。
アベノミクスの「3本の矢」の3つ目は、「民間投資を喚起する成長戦略」ですから、この考えに沿って、「農業の種子部門に民間企業の力を取り入れる」ことを図っていると見ることができます。
この方向で日本の農業を進めてゆくことで果たして本当に日本は生き残れるのか、それとも、そのような政策を取り続けると、最悪、海外の多国籍企業に支配されてしまうのでは、というのが大問題です。
可能性としては、途中段階として、種子は国内の大企業にほぼ支配されるということもあるでしょう。
花卉、野菜などの分野では日本の企業は高い技術力を持っています。但し、コメ、麦、大豆は種子法のために参入していません。
従って、この3作物に関しては、技術力は残念ながらあまり高くないわけです。
しかし、日本におけるコメ、麦、大豆の技術的水準が今のままでよいとは言えないでしょう。いずれは国際的な競争にさらされるに違いありません、というか、もうさらされていますが。
ですから、そのために民間企業の力を借りるというのは悪い考えではないと思います。それがないと成り立たないでしょう。
重要なのは、その力が「農業」全体を支配しないような仕組み、歯止めが必要だということです。独占禁止の仕組みが必要です。
農業は水や土地と同様に、国の財産という考え方のもとに民間企業の力をうまく活用すべきと思うのですが。



◇   ◆   ◇



今月は野草です。花屋さんで売られている園芸種は名前も素性もよくわかっていますが、野草はわからないものも多い。そこが魅力のひとつでもあります。
まずはカラスノエンドウです。マメ科の草です。ヤハズエンドウともいいますがカラスノエンドウの方が一般的です。花は小さく直径1センチくらいですが、上品なたたずまいです。


カラスノエンドウ

写真A カラスノエンドウ
(東京都杉並区上井草2丁目:2019年4月8日)


豆は煮ると食べられるそうですが、私は食べたことはありません。名前のとおりエンドウ豆の仲間ですが、花も似ています。
スイートピーは同じマメ科の植物で花を観賞するためのものです。花の大きさは随分違いますが、雰囲気は両者ともなんとなく似ています。
次は、実は名前はついにわからなかった花です。直径2センチにも満たないらんに似た花で、なかなか派手な装いです。道端にかたまって咲いていました。
カキドウシという野草があり、これに似ているのですが、葉っぱの形が少し違うような気もします。もっとも、野生種も少し違った種のものも多く、奥が深いです。


名を知らぬ花(カキドウシ?)

写真B 名を知らぬ花(カキドウシ?)
(東京都杉並区上井草:2019年4月1日)


知っている方がいれば、ぜひ教えてもらいたい花です。





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