三陸書房
今月号リレー・エッセイ2
 
(7) 内包と外延  その28

シェールオイルはアメリカの切り札か
佐川 峻 
まず、次のちょっと驚くべきグラフを見てください。主要国の石油生産量のここ10年間の推移です。アメリカの増加が際立っています。他の国はほぼ横ばいです。


主要国の石油生産量

出所:「BPStatiscal Review of  World Energy 2019」(BP)より作成


ほんの10年前まではサウジアラビアとロシアが2大石油大国だったのですが、現在ではアメリカに完全に追い抜かれてしまいました。このままだとアメリカの石油生産はまだまだ伸びて、近い将来、ぶっちぎりの石油超大国になるでしょう。
このアメリカの石油生産量が急増したのは、シェ−ルオイルという新しい石油が生産されはじめたのが大きな要因です。2018年時点で、アメリカの全生産量の7割くらいを占めているのではないでしょうか。
シェールは頁岩(けつがん)のことです。大昔に海底に堆積したもので、層状に割れやすい性質があるのでこの名前になっています。堆積した時代の生物由来の石油成分を含むことも多く、そのような頁岩をオイルシェールといいます。
オイルシェールにはシェ−ルオイルが含まれることは以前からわかってはいましたが、経済的な採掘方法が確立したのはつい最近です。頁岩に溶け込んでいる薄い成分を採取するので費用がかかりすぎます。
それをブレークスルーした代表的な工法がハイドロ・フラクチャリング(水圧破砕法)と呼ばれているものです。高圧の水を地下に送り、頁岩にひび割れを起こし、石油成分が溶け込んだ水を再び回収するというものです。
従来は、経済的に採算が取れなかったのですが、技術が進歩して、十分にペイするようになったのです。
アメリカには莫大なシェ−ルオイルの埋蔵量があり、ほぼ独壇場的に進歩する採取方法技術と相まって、最初のグラフで見るような石油超大国に躍り出たのです。
話は少し飛躍しますが、最近のトランプ大統領は中国には貿易戦争を、イランには経済制裁をと、2正面作戦の強気の政策を進めています。元来、2正面の戦争は危険が多く、避けるべきというのが常識です。
しかし、敢えて強気に出るこの裏には、要因の一つとしてシェ−ルオイルの生産が軌道に乗ったということがあるのではという多くの指摘がなされています。
中国は石油生産でも大国ですが、自国生産分は消費量の4分の1程度です。4分の3は輸入に頼っています。アメリカが自国生産分の約2分の1を輸出しているのとは大違いです。
仮に、貿易戦争が激化して石油価格が高騰したり、海上輸送の危険が高まり、石油輸送が滞ったりして困るのは、恐らくアメリカではなく、中国の方ではないでしょうか。アメリカは石油価格が高くなってむしろプラスの面もあるでしょう。
アメリカのシェ−ルオイルがこれからますます価格を下げてくるとすれば、困るのは既存の石油産出国であるサウジアラビア、ロシア、イランなどです。これらの国々に対しても逆にアメリカはより強気で出ていけるわけです。
振り返ってみると、日本が太平洋でアメリカや英国と戦争したのは、本質的には中国大陸での利権が衝突したためです。しかし、開戦の直接のきっかけはアメリカによる石油の禁輸でした。
戦争のための道具である軍艦は重油、車両や戦車、航空機はガソリンとすべて石油から製造される製品で動きます。石油がないと戦争はできません。
石油の備蓄が十分あるうちにという考えから日本は第二次大戦の開戦を決意したといわれています。
それでは、シェ−ルオイルが存分にあるアメリカはよいことだけかというと、そうでもありません。
地下からオイル成分を含んだ大量の水をくみ上げるので環境汚染が心配されています。
通常の原油という濃い成分だと汚染物質は除去しやすいのですが、薄い成分の水が大量に出て、オイル成分を抽出した残りの水分は環境に戻さなくてはならないので、環境汚染が生じやすくなります。
このため、超長期的に見ると、アメリカにとってかなりの負担になるのではと思います。



◇   ◆   ◇



今回は花です。最初は、近所で見かけたとてもきれいなユリの花です(写真A)。


ユリの花

写真A ユリの花
(東京都杉並区上井草1丁目 2019年7月6日)


花としてはありふれていますが、どうしても撮りたいと思ったほどきれいでした。
ユリにはいくつかの種類があり、写真のものがそのうちのどれであるか定かではありませんが、あえて選ぶとすれば、乙女百合かなという気がします。


サボテンと花

写真B サボテンと花
(東京都杉並区井草4丁目)


次はサボテンです(写真B)。
我が家の隣の家の玄関先にありました。確かに自分だけ見ているのはもったいない美しさです。
このサボテンは、本体の形からは金シャチという種類のものに似ていますが、このような花が咲くのかよくわかりません。
サボテンはその本体の姿からは想像できない美しい花を咲かせます。ハスなどの水草の花も幻想的で美しいものが多いようです。





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