三陸書房
今月号リレー・エッセイ2
 
(7) 内包と外延  その31

これからの台風はどうなるのか
佐川 峻 
私は12歳まで九州、宮崎県の延岡市にいました。正確な記憶ではありませんが、感覚的には、台風は毎年来ました。
気象庁の「過去の台風資料」によれば、1951年から今年2019年の第13号まで、県別の上陸した台風の数は鹿児島県が断トツで最も多く、次いで高知県です。鹿児島県ではこの期間に合計41個の台風が上陸しています。
宮崎県は第六位です。第六位ですが、隣の第一位の鹿児島県に半径数百キロにも及ぶ台風が来れば、何らかの影響は受けるでしょう。私が感覚的に「多い」と感じたのは当たっていると思います。
上陸数第一位は沖縄県ではと思ったのですが、先の結果は「上陸」が「海岸線を横切る」という定義によるので、島の場合は「通過」になるようです。テレビの台風の進路などを見ると、頻度として最も影響受ける県はやはり沖縄県だろうとは思います。
ぼんやりとした延岡の記憶ですが、台風が来るというので2度ほど、縁側の雨戸が飛ばされないように板をバッテンに打ち付けたことがありました。そのうちの一つは、それでも浸水が危ないというので、近所の工場に避難した記憶があります。
避難先はコンクリート建物の暗い地下でしたが、安心感はありました。家が浸水してはということで、両親は畳をミシンの上にのせて家を出ました。戻ってみると、浸水はなかったのですが、載せた畳の重さでミシンの足がぐにゃりと曲がっていたのを憶えています。
「延岡は台風銀座だ」、「戸が風で破れると屋根が飛ぶ」という言葉が記憶にあります。
近年、「台風が増えた」や「台風が強力になった」という話をよく聞きます。温暖化で海水の温度が上昇、また温水域が増えて、台風のエネルギーが増しているという話もあります。
なんとなく、「そうかな」という気がします。しかし、延岡から東京に移ってからは、土地柄か傾向なのかわかりませんが、台風に遭遇するのは減ったようにも感じます。
まず、台風の発生数を見てみましょう。発生した台風で日本に接近もしくは上陸するのはその一部です。
1951年から10年ごとの合計発生数を示しました。2011年〜2019年まではまだ2019年が終わっていないのと、2020年にいくつ発生するかわからないのですが、例年の傾向から恐らく、プラス20〜30だろうと思われるので10年合計の近似値としてあえて図示しました。
また10年間の合計数でまとめたのは、毎年にするとばらつきが多く、傾向が見にくくなるためです。
発生数の少ない年としては、2010年の14があります。多い年としては1967年の39があり、3倍近い開きがあります。それを10年ごとの合計数にまとめると、グラフのように約200から300へとまとまってきます。




台風の発生数

出所:「過去の台風資料」(気象庁)より作成



図からなんとなく見えるように、近年の60年間では台風が増加しているという傾向は見られません。むしろ減少しているのではとさえ見えます。
「台風の科学」(上野充、山口宗彦著 講談社ブルーバックス)では、1節を設けて、「温暖化で台風発生数は減少する」と説明しています。減少傾向は間違いではないのです。
1990年頃から始まり、90年代後半になると台風の予測に使われるコンピュター用数値モデルの精度も向上してきました。大気大循環モデル(GCM)という大気の状況を分析、予測するモデルです。
このモデルで台風の発生数を予測すると、温暖化が進むと発生数は減少するという意外な結果が出たのです。この結果が出た当初は「結果は信用できない」などと懐疑的な意見もあったのですが、その後の改良されたモデルでも同じ結果が出ました。
全地球的に、今後100年間に発生数は約30%減少すると予測されているのです。
そのメカニズムは複雑ですが、簡単に説明すると、熱帯の大気は暖まり、水蒸気は増えます。それが上昇するにつれてそれだけ多くの水蒸気が上空で水になる際、多くの凝結熱を放出することになります。ということは高度による気温低下の割合が小さくなり、大気は安定します。つまり上昇気流が強くならないのです。
また、温室効果ガスである二酸化炭素の増加は、大気の宇宙に向かっての放射冷却を妨害し、結果として熱帯の降水量を減少させます。下は暖かく、上は冷たいというのが台風発生の要因なのですが、温暖化はそれを妨害する要因にもなるのです。
結局、温暖化で海面から立ち上る水蒸気は増えても、降水量はそれほど増加しないのです。また、大気はより安定しますから風も起こりにくくなるのです。
意外な結果ですが、それで安心かというとそうではありません。発生数は少なくなるのですが、先ほどのモデルなどから「最大風速の大きな強い台風やハリケーンの割合が増える」という結果も得られています。
数としては少なくなるが、荒々しい台風の割合は増えるのです。アメリカに襲来したハリケーンなどを見ると、なんとなく説得力のある予測です。
今後、台風や大雨に対する備えはより万全にということでしょうか。
俳句の秋の季語として野分(のわけ、のわき)があります。台風などの強い風を指しています。
「鳥羽殿へ五六騎急ぐ野分かな」は与謝蕪村の句です。伏見の鳥羽離宮で何か緊急の事態が生じたのでしょうか。それとも嵐を避けるために急いでいるのでしょうか。映画を見ているような躍動感があります。



◇   ◆   ◇



今月は2色の花です。最初は2色のオシロイバナです(写真A)。


2色のオシロイバナ

写真A 2色のオシロイバナ
(東京都杉並区下井草3丁目 2019年9月16日)



オシロイバナは赤、白、黄色の3色があります。一つの花に筋のように赤、白が入るというのを時たま見ますが、写真のようにくっきりとしているのは珍しいです。まだらと言うよりは花びらが赤と白に分れているように見えます。
オシロイバナでは、花びらはそれぞれ独立して色を決めているのでしょうか。
次はチェリーセージです(写真B)。これも赤、白です。


チェリーセージ

写真B チェリーセージ
(東京都杉並区上井草1丁目 2019年5月4日)



チェリーセージは写真のように直径数センチのかわいい花で、名前のようにさくらんぼのような香りがします。
虫よけ効果もあります。そのため、他の花とチェリーセージを一緒に育てると虫に食われにくくなるそうです。
色は、赤、白ですが、写真のように白、赤2色もあります。赤が優勢な花もあれば白が優勢のもあります。ピンクもあるそうです。どれが優勢な色と決まっていないというのが面白いです。





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