三陸書房
今月号リレー・エッセイ2
 
(7) 内包と外延  その35

リスクのものさし
佐川 峻 
新型コロナウィルスが流行しそうだというので、不安が広がっています。どのくらいの規模で流行するのか、それが日々の生活に何をもたらすのかがまだよくつかめないので、不安は一層募ります。不安は根源的な感情なので、コントロールがむずかしいものです。
政府が「トイレットペーパーは十分にあるので買い占めなくても大丈夫ですよ」とテレビで伝えていましたが、翌日の朝はスーパーの前にちょっとした行列ができていました。
年配の人は憶えていると思いますが、45年前のオイルショック当時の記憶が蘇りました。その時にもトイレットペーパー買い占め事件が生じましたが、後でそれは全くのカラ騒ぎで、実は十分な量のストックがあったと判明しました。
「心配はありません」と報道すると「本当は何か危ないのだろう」とかえって心配して、買い占めに走る人は一定の割合はいるでしょう。気持ちはよくわかりますが、そのようなプチパニックから逃れるには、経験から学ぶことと、十分な裏づけ情報を得るほかありません。
あらためて見ると、新型コロナウィルスだけでなく、個々の人にとっての心配事はいくつもあります。健康に関しては本人の持病もあるし、家族の病気もあります。仕事、食べ物、地震や台風も心配です。これら全てがなんらかのリスクとなります。
要するに生きてゆくうえで、いくつものリスクがあるのです。リスクをただのリスクのままにしておくと、不安は解消するどころか、かえって募ります。
そこで、この得体のしれない多くの潜在的リスクをなんとか理解、評価できるようにすることが、非常に重要な第一歩だろうと思われます。
楽しい話題ではないですが、そのリスクを避けたり、コントロールできるかどうかは、それからの話です。
「リスクのモノサシ」(中谷内一也著 日本放送出版協会)で著者の中谷内(なかやち)氏はリスクのものさし創りを提案しています。
リスクを測れるものさしができれば、その程度に応じた対応が可能になります。不安も減少し、対応手段の優先順位などが判断でき、より効率的な対応が実行できます。
言われてみれば、当たり前のことのようですが、実際にそのようなものさしを使っている人はごく少数でしょう。
リスクのものさしとして望まれる条件はいくつかあります。
まず、数値として示すことができればわかりやすいし、比較可能になります。ただし、その数値はある決まった共通のものさしで測られたものでなくてはなりません。
このようなものさしで測られたリスクの表を筆者は「標準化されたリスク比較セット」と呼んでいます。名前はいかめしいですが中身はシンプルなものです。
具体的な比較セットの例を見てみましょう。ものさしの数値は10万人当りの年間死亡者数です。数値が客観的なもので、かつ共通なので、リスクを比較、評価できるのです。


標準化されたリスク比較セットの一案

この標準化されたリスク比較セットから、比較可能なリスクの大きさがわかります。死ぬというリスクでは病気、事故、災害などいくつかありますが、ガンが一番大きなリスクであることがわかります。
しかし、この数値を評価するのには、いくつかの注意点があります。
このリスクの大きさは日本国民全体の平均値です。
また、交通事故については自動車の運転回数の多い人ほど増加するでしょうし、自然災害などは居住する地域によって大きな差が生じるでしょう。
私のような後期高齢者で、持病持ちだと、ガンのリスクは表の数値よりは一桁くらい大きくなるのでは思います。表にはない病気のリスクもかなり高いはずです。
ということは、私にとってのリスク回避のポイントは病気の予防とケアだということになります。平凡な結論ですが、説得力があります。
漠然と感じていたことが数値で裏付けられました。
気になるのは新型コロナのリスクですが、中谷内氏の著作では、勿論、評価されていません。
統計数値が得られているインフルエンザは0.55とされています。つまり、10万人について0.55人が亡くなるというリスクです。
興味深いのが「入浴中の水死」です。そのリスクは2.6と結構高いのです。火事や自然災害よりも高いのです。言うまでもなく高齢者はもっと高いでしょう。病気もさることながらお風呂も要注意です。



◇   ◆   ◇



今回は街の鳥です。まずはインコです(写真A)。


えさを待つインコ

写真A えさを待つインコ(東京都杉並区下井草4丁目2020年2月7日)



この色鮮やかなインコは、かなり以前から群生してはいたのですが、最近あまり見かけなくなりました。
と思っていたら、健在でした。
近くの住民がエサ箱を作って、夕方の決まった時間にエサをやっているので、その時間になると集まってくるのです。
写真は2羽ですが、あたりには10羽くらいはいました。近所には林があり、そこに棲んでいるのでしょうか。
ネットで調べると、1960年代から出現したワカケホンセイインコらしいです。
インド、スリランカ原産の野生種が日本に持ち込まれたものとありました。世田谷区のとある鳥獣販売業者から逃げたものらしいです。もともと野生なので、日本でも棲みつけたのでした。テレビ番組の「ダ―ウィンが来た」でも取り上げられたとあります。
次はカラスです(写真B)。


公園のカラス

写真B 公園のカラス(東京都杉並区井草4丁目2020年2月8日)



大きなカラスです。顔つきも精悍で、かなりの歳ではないかと思います。
場所は近所の井草森公園で、ここには大木の上にカラスが巣を作っています。カラスが嫌いな元石原都知事の時代に駆除が進んだのと、エサになる生ごみの管理が厳しくなり、数はかなり減ったようですが、まだまだいます。
私はカラスにうらみはありませんので、いても別にかまわないのですが、大方の人にはあまり好かれていないようです。生活力旺盛で、なんとなく厚かましい感じがするからでしょうか。



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